芝生の種類
芝生にはさまざまな種類があります
芝生の種類
芝生には、イネ科の多くの植物が使われます。園芸では、大きく3種類、日本芝・暖地型西洋芝(夏芝)・寒地型西洋芝(冬芝)に分類されます。
日本芝
日本が無人島だった時代から海岸などに生えていた植物で、古くから庭園用に栽培されてきました。高温多湿に強いため西南日本でも比較的容易に栽培できますが、冬には地上部が枯れてしまいます。
シバ属
シバ属には、日本で最も多く植えられているコウシュンシバZoysia matrella Merr. (一般に高麗芝と呼ばれているのはこれ)やノシバZoysia japonica Steud. が含まれます。いずれも日本にも自生しており、日本では一般に「日本芝」と呼ばれています。
シバ属についてはこちらも参考にしてください。
いずれも背の低い多年草で、冬は休眠し地上部が枯れます。沖縄から東北地方南部まで広い地域で栽培可能ですが、寒冷な北海道や北部東北地方には適しません。芝刈りをしていても花が咲くことがありますが、花粉症の原因になるという報告はありません。
この仲間は、夏場でも高い光合成能力を持ち(C4植物)、薄層芝緑化など屋上緑化に適します。
高麗芝
植物学的にはコウシュンシバ。
丈夫で育てやすいため広く栽培されます。西洋芝と混ぜると競争に負けるので、オーバーシードは避けたほうが良いでしょう。
高麗芝の中で、葉が細くきめ細かな品種を「姫高麗芝」と呼びます。
TM9は成長が遅く芝刈りの手間が少なく、冬枯れの期間が短い品種ですが、登録品種であり、特定の生産者のみが栽培しています。弊社は鳥取県芝生産組合から仕入れていますが、在庫が無い場合は施工できません。
暖地型西洋芝
暖地型西洋芝は温帯から熱帯に適する背の低い牧草で、その多くは高い光合成能力を持ちます(植物学ではC4植物という)。寒さに弱いので、東北地方北部・北海道や山地には適しません。
ギョウギシバ属
ギョウギシバ属の代表的な種、バミューダグラス(ギョウギシバ)Cynodon dactylon Pers. は、繁殖力が旺盛で高温・乾燥にも強く、さらに踏み付けにも強いため、運動場に適します。ティフトン・リビエラといった品種があります。
夏はギョウギシバ、冬は寒地型西洋芝(ホソムギやナガハグサ)を切り替えることで常緑の芝生とすることができます。
ギョウギシバ
この写真は芝生に広く使われるティフトンという品種です。繁殖力が強く地下茎でどんどん殖えるので、庭に植える場合は花壇などに侵入しないように芝生の外側をきちんと区切ってやりましょう。冬は休眠します。
イヌシバ属
セントオーガスチングラス(イヌシバ)Stenotaphrum secundatum (Walt.)O.Kunze は成長が早く、丈夫で、日陰にも強く、芝刈りの必要が少ないため、沖縄では広く栽培されています。
しかし、霜が降りると枯れるため、本州以北ではほとんど栽培されていません。
イヌシバ
沖縄で栽培されています。
ヒートアイランド現象により、本州でも都市部では栽培可能と思われます。
チャボウシノシッペイ属
センチピードグラス(チャボウシノシッペイ)Eremochloa ophiuroides (Munro) Hack. は、「ムカデシバ」とも呼ばれるほふく性の多年草で、中国南部から東南アジアが原産地です。暑さ寒さに強く丈夫なため、近年畦道や堤防の保護に使われています。
成長点が地上にあるため芝刈りに弱く、短い芝生には適しません。
品種によっては、高さ3cm程度の刈り込みには耐えますから、長めの芝生には使えます。
耐陰性は比較的高く、1日の日照時間が半日弱でも育ちます。
特性が優れているのは、タキイ種苗のティフ・ブレアですが、これも登録品種なので、許可無く増やすことは禁止されています。(自然に殖えますが、それを売ったり譲ったりはできません)
寒地型西洋芝
大部分がヨーロッパ原産の牧草で、生育適温が15〜25℃程度とヨーロッパの夏に適応しています。日本では冬でも休眠しないため常緑となりますが、夏の高温に弱いという欠点もあります。
三種混合西洋芝
三種類の牧草を混ぜて植え、四季を通じて緑を保ちます。(トールフェスク・ケンタッキーブルーグラス・ペレニアルライグラスの混植)。
ウシノケグサ属
トールフェスク(オニウシノケグサ)Festuca arundinacea Schreb. はヨーロッパ原産(北アフリカ・中央アジア・シベリアにも分布しています)の牧草。比較的高温に強いため、植栽工法を工夫すれば日本の暖地でも栽培可能です。牧草として植えられるほか、斜面緑化や運動場(サッカーやラグビー)にも使われます。
ただし、芝刈りをしないと背が高くなり開花し、花粉症の原因となったり、種子で繁殖して周辺の植生を破壊する危険もあります。きちんと芝刈りをすれば花は咲かないので問題は起きません。
(佐賀県のみ条例により栽培を禁止しています)
同属のFestuca elatior L. (メドーフェスク)やFestuca rubra L. (クリーピングレッドフェスク)も芝生として栽培されます。
イチゴツナギ属(ブルーグラス)
ケンタッキーブルーグラス(ナガハグサ)Poa pratensis L. はヨーロッパ原産の牧草(日本にも分布しています)。日光と水を好み寒さに強いが、暑さに弱いという欠点があります。日当たりがよく、排水がよく水分に富んだ土地を好みますが、やせた酸性土壌にも耐えます。寿命は60年程度とされます。
この仲間は、アメリカでは最も一般的な芝生です。西洋芝は刈り込み頻度が多くなりますが、アメリカの家庭では、毎週日曜に芝刈りをしたり、アルバイトを雇って管理しています。
スズメノカタビラPoa annua L. はきわめて丈夫なので容易に栽培でき、むしろ雑草とみなされていますが、公園などで冬も芝を緑にするため活用されることもあります。
通常は秋に発芽し、冬を越して翌年の春に開花・結実し、夏には枯死します。しかし、環境によっては一年中その姿を見る場合もあります。やや湿った環境を好むため、冬の水田でよく見られます。
アメリカ南部では「ポアナ(Poa annua)」と呼ばれ、ゴルフ場のグリーンにも使われます。
スズメノカタビラ
ドクムギ属(ライグラス)
ペレニアルライグラス(ホソムギ)Lolium perenne L. とイタリアンライグラス(ネズミムギ)Lolium multiflorum Lam. は、いずれも成長が早く踏み付けにも強いため、運動場に適します。このため、サッカー場で多用されています。
暑さに弱く夏は休眠するため、ティフトンなどの暖地型西洋芝と混植することで年中緑の芝生を楽しむことができます。ただし、都市部ではヒートアイランド現象により夏に根まで枯れてしまう場合があるため、秋の目土を入れる前に種を蒔く必要があります(目土にはBLパウダーを使用するとよいでしょう)。
ペレニアルライグラス
冬の状態。
ドクムギLolium temulentum L. は、名前こそドクムギですが、植物そのものに毒はありません。実に菌が寄生すると毒素が発生しますが、きちんと芝刈りをすれば花は咲きませんから、芝生として栽培する場合は問題になりません。
コヌカグサ属
コヌカグサAgrostis alba L. を初めとする、ゴルフ場で多用されるベント芝の仲間です。
ゴルフ場のグリーンでは、ハイコヌカグサAgrostis palustris Huds. (クリーピングベントグラス)が多く植えられています。ベント芝は短く刈ることができますが、病虫害が発生しやすく、年300回の刈り込みが必要になるなど管理が大変なため、一般の公園・庭園には適しません。
カモガヤ属
カモガヤDactylis glomerata L. (オーチャード・グラス)は牧草として広く使われています。絹糸草とも呼ばれ、盆栽に使用されることもあります。
湿った肥沃な土壌を好みます。比較的耐陰性が高くなっています。
アワガエリ属
オオアワガエリPhleum pratense L. (ティモシー)は高品質の牧草として知られていますが、冷涼多湿な環境を好み、暑さには弱いため平地ではよく育ちません。
馬のエサになるほか、家庭ではうさぎのエサに使われています。
寒地型西洋芝の管理上の注意
寒地型西洋芝は芝刈りをしないと花が咲きますが、種によっては花粉が花粉症の原因となることがあります。また、オニウシノケグサなど一部の種類は河川敷などではびこり雑草となる危険があります。
寒地型西洋芝は芝刈りを欠かさないようにしましょう。
高麗芝やギョウギシバなど暖地型の芝は、芝刈りをしても花が咲きますが、特に問題はありません。
カナダ芝
いわゆるカナダ芝(カナダグリーン)は、芝の品種名ではなく、クリーピングレッドフェスク(オオウシノケグサ)Festuca rubra L. が1/2、アニュアルライグラス(ボウムギ) Lolium rigidum Gaudin とケンタッキーブルーグラス(ナガハグサ) Poa pratensis L. を、各1/4の比率で混合したものです。
西南日本都市部は夏に蒸し暑くなるため、うまく育たないことがあります。
その他の芝
潜在的に芝生として利用可能な植物は他にもありますが、あまり利用されていません。
気候帯別お勧め芝生
Hardiness Zoneに応じた気候帯別お勧め芝生
Hardiness Zoneの解説はこちら
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